やませながいもの機能性分析
2015年(平成27年)、八戸工業高等専門学校 マテリアル・バイオ工学コース山本歩准教授が実施した「やませながいもの機能性分析」をご紹介します。
分析項目
【成 分】 全糖量(グルコース相当量)、タンパク質量、糖度(濃度)
【機能性】 消化酵素(アミラーゼ)活性、水溶性タンパク質の構成比較
長芋抽出液の調整
抽出エキスの全糖量・タンパク質量・糖度測定
生おろし長芋及び、やませながいも冷凍とろろ(製品)の間に差はない。
全糖量 (mg/mL) |
タンパク質量 (mg/mL) |
糖度 (%) |
|
---|---|---|---|
三沢産長芋 | 25.5 | 25.4 | 6.4 |
やませながいも冷凍とろろ(製品) | 22.5 | 24.1 | 6.8 |
他県産長芋 | 20.9 | 23.9 | 5.0 |
消化酵素(アミラーゼ)活性比較
アミラーゼ活性は加熱長芋では活性が消失したが、生、凍結、製品では活性が保持されている。
水溶性タンパク質の構成比較
アミラーゼやディオスコリン由来と思われる各種水溶性タンパク質が生、凍結サンプルでは保持されているが、加熱サンプルではタンパク質が殆ど確認されない。
結論
- やませながいもを使用した本製品(やませながいも冷凍とろろ)は生長芋の機能性を保持している。
- 加熱処理(80℃、30分)で長芋タンパク質の活性はほぼ完全に失われる。
- 他県産と比較し、三沢産は糖質量やタンパク質量が優れている可能性が示唆された。
やませながいも【秋掘り・春掘り】および、
それぞれの【皮あり・皮なし】の成分比較
分析項目
【成 分】 糖度
【機能性】 消化酵素(アミラーゼ)活性、水溶性タンパク質の構成比較
長芋抽出液の調整
長芋エキスは、下図のようにカットし、皮をむいたもの(皮なし)と皮をむかないもの(皮あり)としてミキサーにて破砕し、破砕した後に遠心分離にてエキスを抽出した。
抽出エキスの全糖量・タンパク質量・糖度測定
生の秋掘り(皮なし)を基準とした場合、生の春掘りの全糖量(長芋エキスに含まれる全糖質の量)は、秋掘りの約0.6倍であったが、タンパク質量は秋掘りに比べて、生の春掘りは約1.4倍であった。
このタンパク質量の違いは、土の中で休眠し越冬した長芋が、春を迎え発芽するために必要なエネルギー源であるグルコース(イモに貯蔵されているデンプンがアミラーゼにより分解されることで生じる糖質)を獲得するために、細胞内のアミラーゼなどのタンパク質を増加させたことに起因している可能性が考えられる。
また、春掘りが秋掘りと比較し全糖量が少なかったのは、春掘りが発芽するためにグルコースなどの糖質を消費した可能性が考えられる。
全糖量 (mg/mL) |
タンパク質量 (mg/mL) |
糖度 (%) |
||
---|---|---|---|---|
生 | 秋(皮なし) | 25.5 | 18.5 | 6.1 |
秋(皮あり) | 23.6 | 21.3 | 7.0 | |
春(皮なし) | 14.8 | 25.3 | 6.5 | |
春(皮あり) | 14.6 | 26.6 | 6.2 | |
凍結 | 秋(皮なし) | 14.5 | 10.2 | 4.8 |
秋(皮あり) | 23.1 | 20.2 | 6.6 | |
春(皮なし) | 12.0 | 19.3 | 5 | |
春(皮あり) | 17.8 | 23.5 | 5.8 |
消化酵素(アミラーゼ)活性比較
春掘りにて、消化酵素(アミラーゼ)活性は秋掘りに比べて約2.5倍以上高い。
これは前述したように、春の発芽に必要なエネルギー源(グルコースなどの糖質)を獲得するために、細胞内のアミラーゼ量が増加したことによるものと考えられる。